あまりビオ系ワインを飲まない僕にとっても、このワインは色や香から
いかにも「自然派ワインだ!」のニュアンスがすごく現れて感じました。

ティエリ・ピュズラ・クールシュヴェルニ2002 

初日の感想は香に腐卵臭がすこし感じたのと、味わいは、微炭酸のアタックと
ニュートラルでジューシーなボディ感。
葡萄の凝縮度は感じるものの、なにか芯の抜けたような感じでした。

5日ほど冷蔵庫でおいてまた試飲。

にごりはさらに強くなってきました。
ちゃんと飲めるのかなと不安になりつつも香をかぐと

今度は黒酢や甘草のような香が強くなっていました。
飲んでみると酸味はまだしっかりと感じ、それに負けないジューシーなボディ感が
バランスよく調和して「美味しい!」と感じる味わいになってました。

普通のワインなら徐々にヘタってくるのになぜだろう?
言うなれば「ビオワイン・パラドックス」です

ビオ系のワインはあまり飲まないなりに考えてみました。間違っていたらお教え下さい。

初日感じたピリッとした酸味は炭酸味でしょう。

ビオ系ワインはマセラシオン・カルボニクなどを行なったり、
酸化防止剤をあまり使わない分、醸造中のタンク内に炭酸ガスを充満させて
醸造することが多いため、微量の炭酸ガスがワインに溶け込み、
抜栓後、舌にピリッとくる炭酸味を感じることは多いです。

でもこの炭酸味は普通、時間とともに消えて行きます。なのにこのワインは5日経っても
酸味がしっかり残っている。いやむしろ増えているような。

炭酸は減ってますが、何か酸味が増えている。
そう、酢酸が増えているように思えます。
これは酸化防止剤が少ないと当然を起こりうる、酢酸菌によるワインの劣化の1パターンで、
ヴィネガーのようになってまずくなって飲めなくなっていきます。

ところがこのワインはヴィネガーではなく飲用可能な果実酢になったように感じました。
強めの酸味にこのワイン本来のジューシーさがあいまって独特の深みある味わいに変化しました。

樹齢の古い木の葡萄を収穫量を減らし、BIO的に葡萄を栽培し、
SO2の添加を極力減らして醸造すればこんなワインができるのでしょうか?

果実酢化しているなら2、3ヶ月たっても逆に酸度が上がれば酒質は安定してきます。
それがいわゆる一部の自然派ワインが数ヶ月経ってもおいしく飲める理由なのかなあと
思ってしまいました。

ドイツのガイゼンハイム大学の授業かドイツワイン・インスティチュートのセミナーで
劣化ワインの授業があって、その時、バクテリアに侵されたワインとか酢酸菌に侵された
ワインとか飲む機会があったのですが、このピュズラのワインはそんなマイナスなイメージな
ニュアンスは全くなかったです。

まだまだこの手のワインは数を飲んでないビオ初心者なので断定的なことは言えませんし、
とりあえずこのワインはこんな感想を持ちつつも、
また面白そうな自然派ワインを探して飲んでみたいと思ってしまいました。